顧客体験のパーソナライズ化~顧客体験2.0時代の生き抜き方~

パーソナライズされたオンラインでの買い物といえば「Amazon」のレコメンド機能が例として挙げられることが多いのではないでしょうか。 顧客ごとに最適な商品提案をすることによって、満足度を高め、競合他社に顧客を奪われない重要な要素を担っています。

時代はAmazonのような大衆に向けてトレンド商品を発信する手法から、各顧客のニーズに合わせて商品やサービス提案を行う時代へ変わりつつあります。
このような次世代における一連の購買プロセスを「顧客体験2.0」と名づけ、今後のパーソナライズという大きな時代の波を乗り切る方法を考察していきたいと思います。

「顧客体験2.0」時代で重要なポイントなるのが2点。
データの獲得法
データの活用方法
この2点を踏まえ、幾つかの企業事例から「顧客体験2.0」の最新事例を覗いてみましょう。

AIを活用した高精度パーソナライズ提案

Stitch Fix(スティッチフィックス)の事例

ニューヨーク株式市場「NASDAQ」への上場を果たした「Stitch Fix」は≪AIとスタイリストが洋服を選んでくれるサービス≫を提供するスタートアップです。
強みは、AIを積極活用したパーソナライズ化。簡単なアンケートに答えるところからサービス体験は始まります。
回答データが85のデータ属性に分類され解析されていきます。

まずは、AIからの商品提案
顧客が好むであろう商品を過去のデータを参照しながら提案してくれます。
顧客の購買確率を計算し、なるべく売れそうな服とアクセサリーの組み合わせを解析、加えて、届け先まで効率的に商品を配達するための物流面も考慮してくれます。
配達コストを抑えることもしっかりと考えられているのです。

次にAIは顧客の嗜好や居住地域データをもとに顧客にぴったりのスタイリストさんを探してくれます
商品選定は、最終的に人力ですが、データ解析によって極力顧客に合わないスタイリストを手配してしまうミスマッチを防いでいます。

最後に、購入された商品データと過去の返品データに基づいて、需要予測をします
データを参考に、各商品の仕入れ量の適正化を図ることができるのです。
アンケート調査から得られた情報を解析するとともにコスト削減やオペレーション効率化を行う業態が注目をうけています。

パーソナライズによって収集されたデータをどのように処理し、対応していくかを考えたとき、人力では到底対応しきれなくなっていくのは明らかです。
そんな時、獲得したデータを巧みにビジネスモデルへと組み込むAI活用が必須要件になっていくのです。

Proven(プルーブン)の事例

ヘルスケア市場において、AIを活用した高精度パーソナライズ提案を行うのがパーソナライズ化粧品提案を行う「Proven」です。
『TechCrunch』の記事によると、消費者が化粧品を選ぶ平均時間は45-90分ほどかかるといわれています。にもかかわらず、55%の人たちが商品に満足しないという結果が出ているのです。
こうした化粧品市場の課題にもAIが活躍します。

「Proven」のAIは800万以上の化粧品レビュー、4,000を超える科学論文と2万個の成分情報を学んでいます。そこから基礎データと顧客のアンケートデータを紐付けて最適な組み合わせを提案してくれます。

ヘルスケア市場でもAIを積極的に導入し、顧客満足度を高めていった企業が主導権を握る時代が始まりつつあるのです。

アンケート調査方式では難しいデータでの差別化も、AIを開発することでデータ活用方法の幅が大きく広がり差別化を図れます。
獲得データをどのようにして活かすか。「顧客体験2.0」の時代を生き抜くにはその課題と向き合っていくことが必要なのです。

顧客の自宅で行われる自動データ採寸

ここまでオンラインアンケート調査に基づいてパーソナライズ提案を行う企業を紹介してきました。
しかし最近では、”顧客の自宅で行う”手軽な採寸、検査がアパレル業界で取り入れられつつあります。

顧客のデータ収集を行う手法として従来、実店舗での採寸がスタンダードでしたね。たしかに店舗体験の軸にパーソナライズ提案を据える動きも進んでいます。
しかし顧客にとっては店舗に出向くという時間的なコストがかかり、採寸してもらったからには買わなければという心理的ハードルもあります。 自宅採寸ではこうした顧客の負担になってしまうコストを省くことができます。

Nikeの事例

大手スニーカーブランド「Nike」は、コンピュータビジョン技術を使い、顧客の足の形を計測する専用アプリを開発。自宅で手軽に計測が可能なシステムを発表しました。
3Dスキャニング計測器を開発するイスラエル拠点の企業「Invertex(インバーテックス)」を買収したことで、自分の足の正確な採寸データを自動計測できるようになったのです。

こうして「Nike」は最適なスニーカーを提案できるようになりました。

START TODAY(スタートトゥデイ)の事例

「START TODAY」というとあまりピンとくる方は少ないかもしれません。

でも「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」ならほとんどの方がご存じなのではないでしょうか。中にはお持ちの方もいるかもしれません。
専用の採寸ボディースーツを着用するだけで身体中の細かなサイズデータを収集できるという夢のスーツ。
一度採寸してしまえば、「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」で最適なサイズの洋服を選ぶことが可能になります。
ZOZOSUITがEコマースの弱点であった試着できない課題を解決しました。

Amazonの事例

「Amazon」も音響アシスタントデバイス「Amazon Echo Look(アマゾンエコールック)」を販売しています。
CMでなじみが深い「アレクサ」。一声かけるだけで画像や動画を自動で撮ってくれます。

どの洋服を着ていけばいいか迷っている場合、ファッショントレンド情報を読み込んだ機械学習機能で最適なスタイルを自動選択してくれます。

キーワードは「オムニチャネル化」

スマートフォンやIoTの普及によって、簡単に採寸や検査ができた時代がやってきたという認識だけでは、「顧客体験2.0」時代で生きていけません。
オムニチャネル戦略」が時代のキーワードです。

オムニチャネルはスマ―とフォンやSNSの普及によって少しずつ広がっている言葉ですが、 企業とユーザーの接点となるチャネルをそれぞれ連携させ、ユーザーにアプローチする戦略を意味します。

例えば、洋服を買いに行ったときに、店舗に在庫がなかった経験はありませんか?もし店舗に在庫が無くてもECから購入できたり、受け取りは最寄りの店舗でできたりと、ユーザーが欲しい商品を好きな時に、好きな場所で受け取れるようにする戦略がオムニチャネルです。

オムニチャネル戦略でのポイントは2つです。一つは顧客のパーソナライズデータ獲得、もう一つは獲得データを販売チャネルを問わずに活用できる仕組み化です。
顧客にとって商品を購入する場所は、オンラインでも実店舗でもいいのです。顧客が求めているもの。それは、最適な商品を提案してもらい、納得できる買い物をすることなのです。

従来の事業者が抱える問題は、データ連携の仕組み化が上手くできていない点にあります。
たとえば、あるデパートに出店する系列紳士服店へいったとき。店員に細かく採寸してもらい、仕立ててもらった服を購入しますね。しかし後日、同ブランドのオンライン店舗で紳士服を購入しようと思っても、採寸データが紐付いていないため、結局店舗へいく羽目になってしまいます。同系列の他店舗へいったとしても、以前採寸したデータが共有されていないため、また採寸作業が繰り返されることになるのです。

オフラインで得たデータも顧客ごとに管理することによってオンラインでも、実店舗でも顧客が訪れたところで、最適な商品の提案と、納得できる購買体験を提供することができるのです。
そしてその仕組みづくりを積極的に行っているのが、「Nike」、「ZOZOTOWN」、「Amazon」なのです。

「顧客体験2.0」時代に生き残れる企業は、高いデータ精度だけでなく、どこでもパーソナライズ体験を提供するため、データの汎用性を高く活用することができる企業であるといえるでしょう。

(via パーソナライズ最前線。企業は「顧客体験2.0」時代をどうサバイブするのか)

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